東京まで行かなくても大丈夫?地方でハイエンドギターを買う方法を考えてみた

「いつかはハイエンドギターを手に入れたい」。ギターを弾いている人なら、一度はそう思ったことがあるんじゃないでしょうか。僕は藤井裕介、38歳。新潟で音楽教室をやりながらフリーランスのギタリストとして活動しています。ギター歴は22年になりました。

これまでSuhrやTom Anderson、Gibson Custom Shopなど、いわゆるハイエンドと呼ばれるギターを何本か買ってきました。ただ、僕は30歳で東京からUターンして新潟に戻ってきたので、ハイエンドギターの購入には毎回それなりに苦労しています。

東京にいた頃は御茶ノ水や渋谷を歩けばいくらでも試奏できたのに、地方だとそうはいかない。「欲しいギターがあるのに、近くに置いてある店がない」という状況は、地方在住ギタリストの永遠の悩みだと思います。

でも、22年やってきて分かったのは、地方にいてもハイエンドギターを手に入れる方法はちゃんとあるということ。今回は、僕自身の経験も交えながら、その方法を整理してみます。

地方在住ギタリストがハイエンドギターを買うときに困ること

そもそも、なぜ地方だとハイエンドギターの購入が難しくなるのか。具体的に整理しておきます。

試奏できる店舗が圧倒的に少ない

ハイエンドギターは1本30万円以上するものがほとんどです。Gibson Custom Shopのレスポールなら50万円前後、Suhrのカスタムモデルだと60〜70万円に達することも珍しくない。これだけの金額を出すなら、実際に手に取って弾いてみたいのが当然の感覚。ところが、地方の楽器店ではハイエンドクラスの在庫自体が少なく、「弾いてから決める」というプロセスがそもそも成り立ちにくい。

僕が住んでいる新潟だと、島村楽器が数店舗ありますが、常時ハイエンドモデルがずらっと並んでいるかというと、正直厳しいところがあります。東京の御茶ノ水に行けば1つのフロアにハイエンドが20〜30本並んでいるような光景が普通にあるのに、地方ではそうはいかない。この差は大きいです。

比較対象がないまま買う怖さ

ギターの試奏で大事なのは「比較」です。1本だけ弾いてもピンとこないことが多くて、2〜3本弾き比べて初めて違いが分かる。島村楽器の公式サイトでも、試奏は2本以上が重要と解説されています。

でも地方だと、比較したくても棚にあるのが1本だけ、なんてことはザラ。これが地方で高い買い物をする際のいちばんの壁です。

専門知識を持ったスタッフに相談しにくい

ハイエンドギターは木材の個体差やピックアップの特性など、細かい部分の違いが大きい。SuhrとTom Andersonのシングルコイルは構造からして違っていて、Suhrはダミーコイルでハムキャンセルする方式、Tom Andersonはスタック構造で柔らかめの音になる。こういった違いを説明してくれるスタッフが地方の楽器店にいるかというと、なかなか難しい。

都市部の大型店にはメーカー認定のアドバイザーが在籍していることもありますが、地方の店舗ではスタッフの数自体が限られていて、ハイエンドに特化した知識を持つ人に出会える確率は低い。「このギターとあのギター、どう違うんですか?」という質問にしっかり答えてもらえる環境がないと、初めてのハイエンド購入は不安になります。

方法1:地元の楽器店を最大限に活用する

まず最初に検討すべきは、実は身近な楽器店の活用です。

全国チェーンの取り寄せサービスを使う

島村楽器やイシバシ楽器のような全国チェーンの楽器店では、他店舗の在庫を取り寄せて試奏できるサービスがあります。オンラインストアで気になるモデルを見つけたら、最寄り店舗に取り寄せを相談してみてください。

僕も実際にこの方法でSuhrを購入したことがあります。新潟の店舗にはなかったモデルを東京の在庫から取り寄せてもらい、地元で試奏して決めました。取り寄せに数日〜1週間程度かかりますが、往復の交通費を考えたら圧倒的にお得です。

ただし、取り寄せたギターを「やっぱりやめます」と返すのは心苦しいもの。スタッフに手間をかけてもらっている以上、ある程度「このモデルを買う」という気持ちが固まった段階で依頼するのがスマートです。「とりあえず見てみたいだけ」で取り寄せを連発すると、お店との関係も良くない方向に行きます。

スタッフとの関係づくりが意外と大事

地方の楽器店は、スタッフとの距離が近いのが強みです。通い続けていると「こういうの好きですよね」と入荷情報を教えてくれたり、フェア前に声をかけてもらえたりする。

僕の生徒さんでも、地元の島村楽器のスタッフと仲良くなって、Gibson Custom Shopの限定モデルを発売日に確保できた人がいます。地方だからこそのメリットもある。焦らず関係を築いていくのが地味に効きます。

方法2:オンラインショップを賢く使う

ネット通販の活用は、地方ギタリストにとって避けて通れない選択肢です。

ネット購入の3つのメリット

  • 全国の在庫にアクセスでき、選択肢が圧倒的に広がる
  • 店舗間の価格比較が簡単にでき、数万円単位の差が出ることもある
  • 分割払いに対応しているショップが多く、30万円以上のモデルでも48回まで金利手数料無料の場合がある

特に価格面は大きい。ハイエンドギターは定価30〜80万円の幅があるので、同じモデルでもショップによって5万円以上の差がつくこともあります。僕も以前、あるGibson Custom Shopのモデルを買おうとしたとき、3つのオンラインショップで比較したら最安と最高で7万円近い差がありました。同じ新品なのにこの差は見逃せない。

失敗しないためのチェックポイント

ネット通販でハイエンドギターを買うとき、気をつけたいポイントをまとめます。

  • 商品写真が多く掲載されているショップを選ぶ(最低でも5枚以上)
  • 電話やメールで個体の状態を事前に確認する
  • 返品・交換ポリシーを必ず購入前に読む
  • 配送時の破損に備え、到着後すぐに開封して状態をチェックする
  • 付属品や保証書の有無を確認しておく

通販で届くギターは工場出荷時の状態のままのことが多いので、弦高やネックの調整が必要なケースもあります。購入後にリペアショップで初期調整してもらう前提で考えておくと安心です。

また、ギターは「音が好みと違った」「重さが想像と違った」といった理由では返品が通らないことがほとんど。試奏なしで買う以上、このリスクは引き受ける覚悟が要ります。ネット購入は「欲しいモデルが明確に決まっていて、そのモデルの音や弾き心地をすでに知っている」場合にいちばん向いています。

方法3:都市部への「弾丸試奏ツアー」を組む

「やっぱり実物を弾いてから買いたい」という人には、1日集中の試奏ツアーをおすすめします。

事前リサーチで効率を上げる

弾丸ツアーの成否は準備で決まります。当日いきなり楽器店を回っても、お目当てのモデルが売り切れていたり、展示していなかったりする。事前にやっておくべきことはこんな感じです。

  • デジマートやイシバシ楽器のオンラインストアで在庫を検索し、実物がある店舗を特定する
  • 気になるモデルが2〜3本ある店舗を優先的にルートに入れる
  • 可能なら事前に電話して在庫の有無を確認する(展示品と倉庫在庫は別のことがある)

1日で回るルートの組み方

東京で効率よくハイエンドギターを探すなら、御茶ノ水エリアが鉄板です。イシバシ楽器、クロサワ楽器、ギタープラネットなど専門性の高い店舗が集中しています。渋谷や池袋にも大型店舗があるので、時間に余裕があれば足を伸ばす価値はあります。

僕の場合、新潟から新幹線で東京まで約2時間。朝イチで出れば10時の開店に間に合います。交通費は往復で約2万円。高い出費に感じますが、30万円以上のギターを「弾かずに買う」リスクと比べたら、むしろ安い投資です。

実際、僕はこの弾丸ツアーを年に1〜2回やっています。ギターを買うつもりがなくても、色々なハイエンドモデルを弾いておくことで「自分が本当に求めている音」が明確になる。この経験値は、ネットで購入するときの判断材料にもなります。

ルート例時間帯エリア
午前(10:00〜12:30)御茶ノ水エリアを集中的に回るイシバシ楽器、クロサワ楽器など
昼食(12:30〜13:30)御茶ノ水周辺で休憩ここで午前の試奏を振り返る
午後(13:30〜17:00)渋谷・池袋方面に移動イケベ楽器、島村楽器など

方法4:カスタムオーダーなら地方のハンデはゼロ

「既製品にピンとくるものがない」という人は、カスタムオーダーを検討してみてください。オーダーメイドなら地方に住んでいることが一切ハンデになりません。

オーダーの基本的な流れ

カスタムオーダーの一般的な流れはこうなっています。

  • メーカーまたは取り扱い楽器店に問い合わせ
  • ボディ材、ネック材、ピックアップ、塗装、パーツなどの仕様を相談
  • 見積もり提示、納得したら頭金(税込価格の50%程度)を支払い
  • 製作開始、途中経過の報告を受けることもある
  • 完成後に残金支払い、納品

納期はメーカーによって異なりますが、国内メーカーでおおよそ4〜5ヶ月が目安です。海外メーカーだと1年以上かかることもあります。

地方からでもオーダーできる主なメーカー

国内だとESPがカスタムオーダーの先駆け的存在で、1975年から続くカスタムメイドシステムでは素材・構造・塗装・パーツのすべてを自分で選べます。Sago New Material Guitarsやフリーダムカスタムギターリサーチなども人気が高い。

これらのメーカーはメールや電話での相談に対応しているので、地方在住でも問題なくオーダーを進められます。完成品は配送で届くので、工房に何度も通う必要もありません。最近はZoomやLINEでの打ち合わせに対応しているメーカーもあり、木材のサンプル写真をリアルタイムで見せてもらいながら仕様を詰められるケースも増えてきました。

カスタムオーダーの費用は、国内メーカーで30〜60万円が目安。既製のハイエンドモデルと同等かやや高い程度で、「自分だけの1本」が手に入ることを考えると、コストパフォーマンスは悪くない。

ただし、カスタムオーダーには注意点もあります。完成品が手元に届くまで実物を弾けないので、「思っていた音と違った」というリスクはゼロではない。過去に同メーカーの既製品を弾いたことがある、またはメーカーの音の傾向を十分に理解している状態でオーダーするのが安全です。

方法5:情報収集にはブログやSNSを活用する

地方ギタリストにとって、情報源の確保は死活問題です。近くに詳しい仲間やショップがないなら、ネット上の情報を積極的に活用すべき。

特に個人ブログは、実際にその地域で楽器を買った人のリアルな体験が書かれているので参考になります。たとえば、新潟でのハイエンドギター購入事情について詳しくまとめたこちらのブログでは、新潟エリアで実際にハイエンドギターを手に入れるための店舗情報やブランド情報が紹介されていて、僕自身も読んでいて「そうそう、これが知りたかったんだよ」と思う内容でした。

SNSも使えます。XやInstagramで「#ハイエンドギター」「#ギター購入」などのハッシュタグを追うと、ユーザーのレビューや楽器店の入荷情報が流れてくる。YouTubeの試奏動画も、ネット購入前の音色確認には役立ちます。楽器店の公式アカウントをフォローしておくと、セール情報や新入荷をいち早くキャッチできるのもメリットです。

地方在住の同じ悩みを持つギタリストとSNSで繋がれるのも大きい。「この店でこんなモデル見つけた」「あのショップの通販対応が良かった」みたいなリアルな口コミは、公式サイトには載っていない貴重な情報源です。

ただ、ネット上の情報はあくまで参考程度に留めること。特に音に関しては、録音環境やマイク、再生機器で大きく印象が変わります。最終判断は自分の耳で下す、という原則は崩さないようにしてください。

5つの方法を比較してみた

ここまで紹介した5つの方法を、いくつかの観点で比較します。

方法コスト試奏の可否選択肢の広さ手軽さ
地元の楽器店低いできる狭い手軽
オンラインショップ低いできない非常に広い手軽
弾丸試奏ツアーやや高いできる広い手間がかかる
カスタムオーダー高いできない自由度最大手間がかかる
ブログ・SNS情報収集無料できない情報のみ手軽

どれか1つに絞る必要はありません。僕自身は「ブログやSNSで情報収集→オンラインで候補を絞る→弾丸ツアーで試奏→地元の楽器店で取り寄せ購入」という流れで買うことが多いです。複数の方法を組み合わせるのがいちばん失敗しにくい。

まとめ

地方に住んでいると、ハイエンドギターの購入はたしかにハードルが上がります。でも、手段はちゃんとあります。

地元の楽器店の取り寄せ、オンラインショップ、弾丸試奏ツアー、カスタムオーダー、そしてネットでの情報収集。これらを上手く組み合わせれば、東京に住んでいなくても自分にぴったりの1本にたどり着けます。

僕が22年ギターを弾いてきて思うのは、「最高の1本」は焦って買うものじゃないということ。地方だからこそ、じっくり時間をかけて探す楽しさがある。情報を集めて、計画を立てて、ここぞというタイミングで手に入れる。そのプロセス自体が、ギター好きにとっては最高にワクワクする時間だと思います。

最終更新日 2026年6月2日 by unratt